
「ベトナム戦争」はこの国を理解するのに避けて通れないと思ってました。
まずは歴史の事実関係だけでも押さえたくて、以前Wikipediaを読んでみたんですが、登場人物や組織が多く、利害関係が複雑で、さらに期間も長いので、全く頭に入ってきませんでした。
そろそろと思って、比較的レビュー評価も高いこちらの本を読んでみました。
■良かった点
端的に分かりやすかったです。各組織の特徴や思惑をはっきりさせ、戦争の転換点を押さえた解説をしているので、なぜその事件が起き、その結果になったのかイメージがつきやすく、タイトル通りの内容となってます。入門書として適しています。
徹頭徹尾、中立の視点で書かれていて、かと言って、淡々とした感じでもなく、あの戦争の凄まじさや世界に与えたインパクトが文面からひしひしと伝わってきます。
自由主義、共産主義のいずれからも距離を置いて、事実の描写に徹しているので、「読者の考えを広げるための材料を提供してくれる」という点で良書だと思います。

■微妙だった点
半分ぐらいで本編が終わって、あとの半分は著者の取材ノートみたいな感じで、各戦闘の詳細などが紹介されていました。
また、後半のパートで主要人物の紹介にもページが割かれているのですが、単なる年表に留まっているので、もう少し掘り下げて人物像を浮き彫りにした方が面白かったのではないかと思います。
■まとめ
「ベトナム戦争とは世界史上どんな意味をもった戦争だったのか?」また、「どうやってベトナムは大国アメリカに勝利し、独立を勝ち得たか?」について十分応えてくれる有用な本でした。(電子書籍は1,000円切るのでコスパも良い)
本を読んでから、ベトナムの社会環境を見ると「なるほど」と思えることがあります。例えば、1年くらい前から、外国人が銀行口座を開設できる条件が以前より厳しくなりました。噂では、不法滞在の外国人がベトナム国内で稼いだ大金を海外送金するのを防止するため、と言われてます。
他にも、ベトナムに住んでいると、「自国や自国民の利益を守ろうとする意識が強い」と感じることが多々あります。これは、長年の戦争でようやく手に入れた独立を死守しなければならない、という強烈な意識の表れだと思います。
植民地時代の支配者と被支配者の関係は、非人道の極みだったと想像に難くないです。最近になってドイツが植民地時代の虐殺を謝罪するというニュースがありましたが、帝国主義を推し進めた他の国々も五十歩百歩だったことでしょう。
現地に滞在しているとより興味を持って読めるので、またベトナム関連の本を見ていきたいと思います。それでは、また。